食物アレルギーとは
食物アレルギーでは、本来は害のない食物に対して免疫反応が過剰に起きることで、じん麻疹やかゆみ、咳、嘔吐などの症状が生じます。時にアナフィラキシーと言って、強い全身性のアレルギーを起こすことがあります。日本では鶏卵、乳、小麦が全体の70%ほどを占めています。そば、ナッツ類、甲殻類、果物なども原因食物となることがあります。
その他、口腔アレルギー症候群や食物依存性運動誘発アナフィラキシーといった特殊なタイプもあります。
食物アレルギーの症状
全身に様々な症状が現れます。
- 皮膚症状:じん麻疹、赤み、かゆみ、むくみ、湿疹
- 粘膜症状:鼻水、鼻づまり、くしゃみ、口の中の違和感
- 呼吸器症状:咳、喘鳴(呼吸がゼーゼーする)、
声がかすれる、呼吸困難 - 消化器症状:嘔気・嘔吐、腹痛、下痢
- 神経症状:頭痛、活気低下、不穏、意識障害など
- 循環器症状:頻脈、血圧低下など
アナフィラキシー
アレルギーを引き起こす食物を摂取してからすぐに、複数の臓器で重度の症状が起こる状態です。呼吸困難、急激な意識障害、血圧低下などが起こるアナフィラキシーショックが起きると、最悪の場合は命にかかわる場合もあります。
食物アレルギーの診断がついている人は、医師の指導のもと誤食に気をつけ、またエピペン(アナフィラキシーの治療薬)を処方されている方は、医師の指示に従って適切な使用方法を守るようにしてください。
食物アレルギーの検査
正確な診断を行うために、まずは詳細な問診が欠かせません。その後、血液検査や皮膚検査(プリックテスト)を行い、総合的に判断をします。必要に応じて食物経口負荷試験を行うこともあります。
疑わしい食品を食べてから何分後にどんな症状が出たのか、どの程度の量を食べたのか、これまで食べたことはあったのか、などが重要な情報です。ベビーフードなど市販のものを食べてから症状が出たような場合には、市販品の成分表示がわかるものを持参いただくととても参考になります。
血液検査(特異的IgE抗体測定)
血液中にある特異的IgE抗体という物質を測定します。ダニやスギ花粉、食物アレルギーであれば卵白や乳など様々なアレルゲンに対して「それだけに反応する抗体」として体内で作られるものです。特異的IgEが高いほど強く感作されていることを意味します。(感作:アレルゲンを異物とみなして排除しようとする免疫反応が働き、IgE抗体が作られた状態を言います。)
しかし、IgEが高くても食べて症状を認めない場合もあり、この場合には食物アレルギーとは診断しません。またIgEの値から、食べられる食物の量や、生じる症状の強さを正確に予測することは困難です。
皮膚テスト
15分程度で結果が判定できる、プリックテストという皮膚テストがあります。
プリックテストとは、皮膚の上に直接、少量のアレルギー原因物質液を置き、専用の針で軽く穿刺します。アレルギーの可能性があると、針で穿刺した部位に膨疹ができます。穿刺から15分後に、現れた膨疹径を測定し判定します。
食物経口負荷試験
食物経口負荷試験は、食物アレルギーの正確な診断をつけるために有効な検査です。院内で、食物アレルギーの疑われる食品を実際に摂取し、症状が出るかどうかを観察し判定する検査です。この検査で症状がでなければ、食物除去を解除したり、除去の程度を緩和していくことが可能です。万一アレルギー症状が出た場合には、即座に検査を中止して適切な治療を行います。
当院では主に、以下のような患者様を対象に、院内で安全に行える症例にのみ、食物経口負荷試験を実施してまいります。
- 過去の血液検査でIgE値が高く、摂取歴のないままずっと食物除去をしている。
- 疑わしい、心配だから、念のため、という理由でなんとなく特定の食物を除去している。
- 乳児期にアレルギーを疑う症状が出て以来、正確な診断やフォローを受けないまま数年除去を継続している。
摂取によりアレルギー症状誘発のリスクが高いお子さんや、複数のアレルギー疾患を合併しているお子さんなどについては、連携医療機関へご紹介させていただきます。
エピペンについて
重度のアナフィラキシーショックによってアドレナリンを投与する必要がある場合に用いられる緊急補助治療薬をエピペンと呼んでいます。アナフィラキシーとは、アレルギーを引き起こすハチの毒や食物が体内に入り込むことで全身に起こり得るアレルギー反応です。また、意識消失や呼吸困難、血圧低下など重篤な症状が現れる状態を、アナフィラキシーショックと言います。
アナフィラキシーショックが起こると、短時間で命にかかわる重篤な状態になることもあります。そのようなケースでは、エピペンを使うことで救急搬送されるまでの間に症状の悪化を抑制できると考えられています。エピペンは使用法を誤ると非常に危険な薬剤でもありますので、医師が認めた場合でないと処方されません。
特殊な食物アレルギー
口腔アレルギー症候群(OAS)
口腔アレルギー症候群は、粘膜における接触じんましんです。シラカバなどの花粉症をもつ方が、生野菜や果物などを食べた後に、のどや口腔内にかゆみやイガイガ・むずむずした違和感や「のどが突っ張る感じ」などの症状が起きます。生野菜や果物、ナッツ類のアレルゲンが、花粉症のアレルゲンと似た構造のためにおきる反応と考えられます。
アレルギー反応がおきるとわかっている食品の摂取は避ける様にしてください。基本的には口腔内の反応であることが多いですが、アナフィラキシーを起こすこともあります。生野菜や果物の加熱処理によって症状の発生率が下がりますが、加熱してもアナフィラキシーショックのリスクは消えないためご注意ください。
ラテックス‐フルーツ症候群
天然ゴムに含まれる成分が原因となって起こるラテックスアレルギーの方は、バナナ・パイナップル・アボカド・キウイフルーツ・クリの摂取によってアレルギー症状が起こるラテックス‐フルーツ症候群の発症リスクがあります。
これはアレルゲンが類似している交叉抗原性によるものと考えられています。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
アレルギーの原因となる食物の摂取だけでは症状は起こりませんが、食後の運動が誘因となって症状が起こることがあります。アレルギーの原因となる食物を摂取してから比較的すぐに、様々な臓器で症状が起こります。
甲殻類や小麦の摂取が原因となることが多く、食後2時間以内の運動によって症状が誘発されると言われています。軽めの散歩程度でも症状が起こることもあります。血圧低下や呼吸困難が急速に進行することで、命にかかわるような事態になることもあります注意が必要です。